吾妻渓谷の絶景を空中散歩 夏にも橋完成、観光アピール
東京新聞・夕刊 2016.3.14
吾妻渓谷に建設される「猿橋」のイメージ図
群馬県東吾妻町(ひがしあがつままち)が新緑や紅葉の名所として知られる景勝地「吾妻渓谷」に、新たな橋「猿橋」の建設を進めている。渓谷の一部が水没する八ッ場(やんば)ダムの建設の影響で、周辺は車両通行を規制。観光への影響を懸念する町は散策できる橋で新たな眺望を提供し、見物客を呼び込みたい考えだ。ことし夏の完成を目指す。
吾妻渓谷は長野県境から流れる吾妻川の上流に位置する。川幅が狭く、深い谷の両岸には木々が生い茂る。最も狭い名所「八丁暗がり」付近は「吾妻峡」として、国の名勝にも指定。歌人若山牧水も愛し、絶賛する短歌を残している。
建設の是非をめぐり議論になった八ッ場ダムは昨年から本体工事が始まり、二〇一九年度に完成予定。ダム湖に沈むのは隣町の流域だが、絶景の一部が失われてしまうことに地元住民らが危機感を持っていた。
そこで東吾妻町が着目したのが江戸から大正時代に実在した木橋「猿橋」の存在だ。
計画ではダム建設予定地から約一キロ下流に、長さ四十三メートル、幅四メートル足らずの鉄骨造りの橋を建設。同じ名前で、橋桁や欄干を木材で覆い木造風とすることで、レトロな印象を強調する。白絹の滝なども、より近くで見られるという。
周辺の遊歩道なども併せて整備する。町の担当者は「当時の資料を調べて、設計を進めてきた。多くの観光客に訪れてもらいたい」と期待している。