越水に耐える堤防を 筑西で公聴会 水害再発防止へ提言
東京新聞・茨城版 2016.1.18
【算用数字に改め、記載】
(写真)関東・東北水害を踏まえ、鬼怒川整備計画案への意見を述べた公述人=筑西市で
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国土交通省が策定を進めている「利根川水系鬼怒川河川整備計画」の原案に対し、県民らから意見を聞く公聴会が17日、筑西市の国交省下館河川事務所で始まった。
初日のこの日は、環境保全団体のメンバーや関東・東北水害の被災者、消防団員ら6人が水害の再発防止に向け、それぞれ提言を行った。
(増井のぞみ)
堤防の整備など緊急的な治水対策を進める、おおむね30年間の計画。国交省は公聴会での意見を計画策定に生かす。
「利根川流域市民委員会」幹事の神原礼二さん(75)は「水害は全て国の責任」と主張。鬼怒川上中流の栃木県内に4つのダムを建設した上で、堤防整備率は62・7%に上る。
これに対し、下流の茨城県内の整備率は17・4%にすぎず、「ほとんど整備されていない」と指摘した。
神原さんは、ダム偏重の国の政策と、治水のための負担金を支出しながら安全をチェックしてこなかった県の姿勢を問題視、越水しても決壊しにくい堤防の建設を求めた。
「常総市水害・被害者の会」共同代表世話人の逆井(さかさい)正夫さん(67)は、鬼怒川沿いの若宮戸地区の自宅が越水により全壊した。堤防代わりの砂丘が昨年3月、太陽光発電業者に掘削されたにもかかわらず「国交省は業者を追い払わず、パトロールもしていない」と述べた。
筑西市消防団副団長の塚田俊夫さん(63)は、水害が発生した昨年9月10日早朝、堤防のアスファルトの亀裂から水が噴き出すのを目撃し「非常に恐怖を感じた」と証言した。
当時、消防団員約150人と共に、逃げ遅れたお年寄りら住民の避難誘導に当たった。「団員を危険にさらしてしまった」と悔やみつつ、「団員が安心して活動に励めるよう、堤防の強化などを進めるよう強く願う」と訴えた。公聴会は18日も開かれる。