水害現象では、「今回の大雨は、何年に1度のレベル」「今回の洪水は、何年に1度のレベル」ということを評価します。今回の豪雨は、一体何年に1度の規模の豪雨・洪水と評価されるのか。国の公式見解を待っているところですが、鬼怒川堤防調査委員会でも、今のところ、その数字は示されていません。
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そんな中、NHKの報道がありました。
まず、データを確認しますと、国交省の水文水質データベースで確認しますと、11日はもう殆ど雨が上がり、3日間最大雨量は9/8~10の3日間になります。
その3日間雨量を茨城・栃木・群馬の北関東3県で調べてみました。群馬県が圧倒的に多いです。
- (注1)なお、ここでいう雨量は「流域平均雨量」という数値です。個々の雨量観測所の数値を統合して、流域全体での平均雨量に換算します。方法については、こちらをご覧ください。
- (注2)NHKは、なぜか9日~11日の3日間で計算しています。それで流域平均504mmとしています。だから、8日~10日で計算し直すと、もっと大きな値になりそうです。
1)群馬県内
(2015.9.8~10)
2)栃木県内
(2015.9.8~10)
3)茨城県内
(2015.9.8~10)
このデータによりますと、大雨は栃木県に、しかも日光周辺(中禅寺湖周辺)に集中し、最高地点は、モッコ平(栃木県日光市)で、819mm(3日間雨量)を記録しています。
これが、線状降水帯という集中豪雨の特徴なのか、豪雨は栃木県に集中し、群馬県は1番多いところでも、3日間雨量290mm。ちなみに、八ッ場ダム予定地にほど近い中之条では、154mmでした。
さて、NHKの報道では、「鬼怒川では、100年に1回の大雨は360mm程度」としています。これは、利根川水系河川整備基本方針(2006.2.14)に示されている数字でありまして、該当部分(「基本高水等に関する資料」p11)を抜粋すると、こんな感じです。
また、基準点の石井(栃木県宇都宮市)の位置関係を模式図であらわしました。
この図の中で、1/100豪雨(100年に1度の豪雨)が、362mmだということになっています。これがNHKの報道の根拠です。なお、ここで100年に1度の豪雨が問題になのは、鬼怒川の治水計画が100年に1度のレベルの洪水を想定しているからです。
しかし、この試算には疑問があります。
「基本高水等に関する資料」p9を見ていただけるとわかりますが、鬼怒川の降雨データは、大正13(1924)~昭和41(1966)年までのデータを用いており、この50年間の降雨データが全く反映されていません。その中での、1/100=362mmという推計なのです。
では、この50年ほどのデータがないかといえば、そんなことはなく(当然ですが)、上記資料でも、p16に「石井視点での年間最大雨量」は記載されています。
ここでは、2002(H14)念までのデータですが、きちんと昭和42(1967)年以降のデータが示されているのです! まぁ、当然ですが。。。
そして、当の「基本高水等に関する資料」において、昭和41(1966)年以後にも、大きな洪水があったことが記されています(当然ですが)。
100年に1度の豪雨、洪水がどれくらいになるのかは、治水計画の肝となる数字です。そうであれば、極めて不思議な算定方法です。こうした点にさえ疑問を呈さない審議会って、一体何なんでしょうか。