関東・東北豪雨 鬼怒川決壊堤防厚み基準以下
読売新聞・茨城版2015.9.25
◆最上部、2メートル薄く
関東・東北豪雨で決壊した鬼怒川の堤防(常総市三坂町)で、決壊した場所の「天端(てんば)」と呼ばれる最上部の幅が、河川法に基づく構造基準より短かったことが、読売新聞の国土交通省関東地方整備局への取材で分かった。専門家は堤防の厚みが足りず、増水した川の水圧に耐えられなくなり決壊した可能性を指摘している。
国が2006年2月に策定した利根川水系河川整備基本方針によると、鬼怒川の場合、治水の基本となる川の最大流量を示す計画高水流量は、1秒当たり5000~5400立方メートル。
河川管理施設等構造令では、計画高水流量が同5000立方メートル以上の場合、天端幅を6メートル以上とするよう定めている。決壊した堤防の天端幅は約4メートルで、約2メートル短かった。
同局によると、堤防が設置されてから相当の年月が経過しており、決壊した部分の建設時期や、詳細な建設内容は不明。決壊部を含め、鬼怒川の堤防は今後、基準に合ったものに改修する予定だったという。
また、堤防の高さも大雨などの際、ダムなどで調節された後の最大水位「計画高水位」を基準に構造令で定められている。鬼怒川の場合、計画高水位に1・5メートルを加えた高さとなる。計画高水位は標高で示されるが、同局は、構造令に基づいた、地面から見た堤防の妥当な高さは不明としている。決壊部の高さは約4メートルだった。
同局河川部の高橋伸輔・河川調査官は、「決壊は様々な要因が考えられる。堤防の高さも十分だったとは考えていないが、天端幅を含め基準を満たしていなかったことだけが原因とは考えていない」と話している。
今本博健・京都大学名誉教授(河川工学)の話「堤防の決壊は天端が薄く、強度が足りなかったことが最大の原因と考えられる。欠陥堤防と言わざるを得ない」
〈計画高水流量〉
流域に降った雨がそのまま川に流れ出た場合の流量から、ダムや調整池などの洪水調節量を差し引いた流量。