土砂流入で治水機能低下のダム、全国100か所
読売新聞2014.10.16
洪水を防ぐ治水機能を持つ全国約100か所のダムで、流入した土砂が堆積し、大雨に備えて空けておくべき容量が減少していることが、会計検査院の調べでわかった。
局地的な豪雨や台風による大雨が相次ぐ中、河川の氾濫につながる恐れもあり、検査院は国土交通省に対し、土砂の除去などの対策を求める。
土砂の堆積で治水機能が損なわれているのは、群馬県の藤原ダムや和歌山県の二川ダムなど。検査院は近く、該当するダムを全て公表する。
国と道府県は、洪水を防ぐため、大雨の際に、河川から流れ込む大量の雨水をためられるダムを全国約500か所に建設。河川からは水とともに土砂が流れ込むため、ほとんどのダムは設計段階で土砂の堆積量を100年分予測した上で、農業や工業に使う利水容量と、大雨に備えて空けておく容量を算出している。
検査院がこのうち約200か所を抽出し、ダムの状況を記録した書類の分析や現地調査を行ったところ、半分の約100か所で、底面だけでなく河川が流れ込む斜面側にも土砂が堆積していることがわかった。
設計段階では、土砂は底面からたまると予測していたため、斜面への堆積により、利水容量、洪水対策用の空き容量とも実際は想定より少なくなっていたという。
また、運用開始から40~60年しか経過していないのに、100年分の予測量を超える土砂が堆積しているダムが約20か所あった。予測量の3倍を超えるダムも複数あったという。
ダムの空き容量を確保するには、土砂を取り除くか、下流に排出するしかないが、除去には多額の費用がかかり、ヘドロを含む土砂を下流に流した場合は自然環境への影響が懸念される。
検査院はこのほか、ダムの維持管理の問題点も調査。河川法などにより、国と道府県には最長でも1年に1回は、ダムの堤防部分の漏水量とひずみの度合いを計測することが義務づけられているが、計測を3年以上も怠っているダムが二十数か所あったという。
藤原ダムを管理する国交省利根川ダム統合管理事務所は「空き容量に余裕はあり、洪水対策機能は保たれている」とし、二川ダムを管理する和歌山県河川課の担当者は「空き容量は十分で、土砂を除去する予定はまだない」と話している。