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Channel: どうする、利根川? どうなる、利根川? どうする、私たち? Ⅱ
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削られた自然堤防、進まぬ復旧作業

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削られた自然堤防、進まぬ復旧作業/豪雨現場ルポ
日刊スポーツ2015.10.10


  台風18号の影響で9月10日の未明に襲った関東・東北豪雨から10日で1カ月が経過した。死者8人、半壊家屋3851棟、床上浸水3147棟(2日現在)の大災害となった。
  鬼怒川の決壊や越水で最も被害が大きかった茨城県常総市。川の氾濫が伝えられた同市若宮戸地区は、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を設置するために自然堤防が削られ、住民たちは今も「人災だ」と、やるせない思いで生活していた。
  ヘドロ特有の異臭が鼻を突く。住民は乾ききっていない泥の中を家屋から黙々とかき出していた。手足や顔、髪の毛まで白く染まる。砂ぼこりも吸う。一日中、泥まみれになりながら復旧作業に追われ、車で数十分かけて避難所に戻っても、銭湯が定休日なら風呂さえ入れない日もある。
  昨年3月ごろ、ソーラーパネル設置による自然堤防の掘削で無堤地区となった若宮戸。床上1メートル以上の浸水で、鬼怒川に近い区画にある住宅の1階は1カ月がたっても住める状態にない。住民によると、14世帯のうち7世帯が賃貸住宅を借りるなどし、この地を離れた。残りの世帯は2階で生活しているという。
  「お金もないし、行くところもない」と森優妃さん(53)。水害で流し台が壊れたため、皿洗いから米とぎまで外の水場を利用している。10月になり気温も下がり、「冬になるのが不安」と話す。
  初沢由美子さん(65)は心臓が悪く、ペースメーカーを使用している。薬も欠かせないため副作用などで「お手洗いも近くなるし、迷惑が掛けられない」という。水害は怖いが、避難所には行かずに自宅の2階で住み続けるしかない。
  64歳主婦は思いの丈をぶつけた。「越水なんて表現はやめて! 自然堤防を壊して水を呼び込んだようなもの。人災ですよ」。1度も住民へ説明をしない設置業者に納得がいかない。
  1階にある各部屋の壁紙の裏は、水分が乾かないためにカビだらけになった。被害地域が広く、住宅業者もなかなか手が回らない。そのため自ら壁板をはがし、カビの増殖を防ごうとしているが作業は1階の4分の1にも至っていない。避難先の娘宅と自宅は車で片道約1時間もかかるため、復旧作業も進まない。
  昨年の掘削時の写真があった。地区住民が撮影したものだが、重機の屋根よりはるかに高い自然堤防が確認できた。設置業者らは高さが2メートル前後だったと説明するが「自然堤防は2メートル以上あった。大きな木も植わってて、それを根こそぎ崩してしまった」と主張する。
  掘削に初めから反対していた逆井正夫さん(65)は「家が全壊指定となっても、家を建て直す条件で300万円しか出ない。なんでこんな目に…」とソーラーパネルをにらんだ。
【三須一紀】
 
◆関東・東北豪雨
 宮城県2人、茨城、栃木県でそれぞれ3人の計8人が亡くなった。全国で床下浸水は8998棟に上った。最も被害が大きかった茨城県では全壊が50棟、半壊が3836棟。床上浸水が最も多かったのは栃木県で1885棟(2日現在)。常総市の浸水面積は最大約40平方キロメートルと広範囲に及んだ。避難者数は茨城県で541人(3日現在)、栃木県で151人(9月30日現在)。

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